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オムニチャネル・リテイリングの現状、そして今後どうなる?

オムニチャネル・リテイリングの現状、そして今後どうなる?

オムニチャネルは、オムニ(すべて)のチャネル(流通経路)と言う意味で、オムニチャネル・リテイリングは「すべての流通経路での小売り」となる。つまり、いつでも、どこでも、どんな方法でもお客様はお店の商品やサービスを受けられることを指している。

米国のメイシーズがこのオムニチャネル戦略で140%成長を3年連続で達成し、売上を2倍にしている。このため世界の小売流通業がオムニチャネル戦略を積極的に進めている。

実は、このオムニチャネル戦略は企業によって考え方が少しずつ違っている。例えば、米国ebayでは街全体をオムニチャネル化してスマートタウンを作ろうとしている。他にもショールーミングを逆手にとって、お店で試食や試着ができ、お店のタブレットで購入し、倉庫から配送する。こういった在庫を持たない店舗が現れている。日本ではセブン-イレブン・ジャパンのように、オムニチャネルは物流だと定義し、スーツのアオキではCRMであるとしてCRM企業を買収し、他にもクーポン系のアプリ企業に投資している企業もある。

つまり、オムニチャネルを考える時、すべての流通経路でいつでも、どこでも、どんな方法でもお客様が商品を購入できる、サービスを受けられると言う点はどの企業にも求められてしまうのだが、その企業用にブレークダウンすると、企業ごとに定義が違ってくる。オムニチャネルでやらなければならない要件とオムニチャネルで何をどうするかと言う要件は別々で考える必要がある。また、投資額も大きくなりがちなため、オムニチャネルで何をやらないかを決めなければならない。

ここで重要な事は自社にとってオムニチャネル・リテイリングを進めていく時、なぜオムニチャネルを行うのか?を考える必要がある。この「なぜ?」が重要だ。

オムニチャネルの現状

オムニチャネルが必要だとしている背景には、3つの大きな流れがある。

1.スマートデバイスの進化

2.ソーシャルメディアの進化

3.Eコマースの流通が成長

まず、一つ目のスマートデバイスの進化は、もう言うまでもなく、スマートフォン(以下スマホ)やタブレットがこの2年ぐらいで大きく進化してきている。カメラもマイクもインターネットも音楽もニュースも、アプリを使ってサービスを受けられるし、手元に情報が届く。その多くが無料で受けられる時代になっている。これらはハードとソフト、そしてインフラが見事に整ってきているためである。

2つ目のソーシャルメディア(以下ソーシャル)は、ツイッターやフェイスブック、LINEなどのツールが進化してきている。LINEは日本人の約5400万人が使っている。成人男性のほとんどが使っていると行っても過言ではない。ツイッターは主に若年層でよく使われており日本でも2000万人のユーザーが使っている。フェイスブックも2100万人程度が使用しており、世界では12.8億人が使用している巨大ソーシャルになっている。

ソーシャルでは昨年も事件が起きているが、お店でいたずらをしたり、悪ふざけの画像や動画をアップして、あっという間に世界に広がってしまい、お店が無くなったり、倒産してしまった企業もある。このようなモラルの低い使い方もソーシャルではある程度仕方がないところはあるのだが、ここで言いたいことは

・言葉ではなく、画像や動画で伝えることが出来る。

・あっという間に、世界に広がってしまう。

・良くも悪くも、すべて伝わってしまう。

ということが言える。つまり、言葉の壁がなくなり、超高速コミュニケーションで透明性の高い状態で全世界に伝わってしまうということになる。

ソーシャルメディアの特長

・言葉の壁が無い

・高速コミュニケーション

・透明性が高い

このようなメディアが出来た背景には、インターネットの高速化、大容量化がある。今では動画や高画質の画像でさえもあっという間にネット上で公開することが出来る。これにより動きの細かい動作を撮影した動画も、繊細な商品を撮影して加工した画像がネットに公開できる。

3つ目のEコマース(以下EC)の流通が成長していることは下記のグラフでも一目瞭然で、2020年まで高い成長率が考えられている。すでにコンビニや百貨店の売上を超え、スーパーとほぼ同じ流通額になっている。

実際にいろんなEC関連倉庫を見て回ると、ネットで何が売れているかどの程度の物量があるのかよくわかる。ECの現場に長年いる私でも半年も間を空けると、とんでもない成長をしている企業を見ることがあるが、その物量には驚きを隠せない。

この背景には、ネットで商品を購入する、サービスを受けるという手段がしっかりユーザーに根付いていることを示す。ネットで購入した時の理由や不満材料をみると、送料のネックが大きいことが分かる。

送料問題は、ネット通販では一番のボトルネックになっている。物流会社の立場で考えると、ラストワンマイルと呼ばれる宅配会社とユーザーの届け先の課題が非常に大きく、ユーザーの不在やユーザーとのやり取りに費用がかかっている。ここの課題が整理されない限り、送料が安くなっていくことはない。また、モノの流れも多くなってしまったため、倉庫や設備に費用をかけざるを得なくなっている。このため投資額が膨らみ償却資産が膨らんでしまっている。このことから、ECのボトルネックはしばらく解消することができないと考えられる。

複雑化するカスタマージャーニー(顧客動線)

3つの大きな背景として上げた、ソーシャルメディア進化、スマートデバイスの進化

そしてECの流通成長。この3つが生まれて進化してきたために起きている1つに、「ショールーミング」がある。私もいろんな商業施設を見て回ることが多いのだが、商品をスマホで撮影して、価格や商品の詳細をネットで調べている女性を多く見かける。この傾向は実店舗でのチェック、パソコンやスマホでチェック、ソーシャルでチェック、さらにTVやチラシのチェックなどもあり、顧客の導線がとても複雑になってきている。この顧客の導線をカスタマージャーニーと呼んでいるが、以前と比べると明らかに導線が長くなり、複雑になっている。

生活者の買物行動におけるスマホ利用実態調査が2014年8月に実施され、この調査はユーザーがスマホを持つことで、買い物行動がどう変わってきているかを見ることができる。この結果、スマホがユーザーの手元にあるツールになり、スマホで得られる情報が充実すればするほど行動の意思決定が左右されている。生活者の買物行動が変わっていることが分かる調査となった。

買い物前にスマホを使って店舗や商品の情報収集をする人は全体の56.8%であり、特に小さい子供のいる既婚女性は71.9%が経験していると言う。

買い物中にスマホを利用する人は全体の51.8%になっていて、家電こだわり層は店頭で見た商品の相場価格、最安値を確認した経験が48.8%にまで上がってきている。つまり、実店舗に来店している方の半分はスマホでチェックしていると言うことになる。

さらに、買い物または来店後にスマホでアクションする方が24.4%。店で見た商品を、後でネット購入したことがある人は全体の15.5%にもなっている。

 

*生活者の買物行動におけるスマホ利用実態調査

調査時期 :2014年8月26日(火)〜8月27日(水)

調査対象 :スマホ所有男女824人(性年代別に各103人)

対象者性年代 男性女性 10−20代 30代 40代 50代

調査方法 :インターネット調査 全20問

調査内容 :こだわりのある商品ジャンルでの買い物スタイル、及びその買物行動時のスマホの使い方について調査

 

このアンケート結果や今起きている背景を考えると、如何にお客様に店舗に来てもらえるかを以前よりも考える必要が出てくる。チラシ広告はひと目で閲覧出来るという特長があるが、一度どこかへしまってしまうとなかなか探しだすことが出来ない。スマホやパソコンであれば、いつでもどこでも検索してすぐに比較ができてしまう。

実店舗を持っている場合、ネットの検索比較で、近隣店舗とネット専業店を比べられてしまうが、今後、もし実店舗密着型戦略を取っていくのであれば、如何に店舗に来ていただけるか、来て頂いているお客様のサービスをいかに向上させるかを今までのプロモーションとは別にネットを使った戦略を考えていくことが大切である。お店選択の時点で勝負が決まってしまうということである。

今後のオムニチャネルで何が必要か?

オムニチャネルを実施する場合に出てくる基礎的な課題点、問題点がある。

・実店舗とECの顧客情報の一元化

・実店舗とECの商品情報の一元化

・実店舗とECの在庫情報の一元化

・目標管理

まず基礎課題がこの4点になる。残念ながらここをクリアしている小売流通業の企業はまだまだ日本では少ない。この4つの課題は実は同時に考える必要がある。

最初の課題が顧客情報の一元化となる。もともと実店舗では顧客情報を取れないことが多かったが、クレジットカードやポイント施策によって顧客情報と商品購入履歴、来店回数などの情報が取れるようになってきた。しかし、ECの流通額が少なかったことやまだECを行っていない企業からすれば、実店舗とECの顧客情報の一元化はまだ早いと言う判断が出てもおかしくはない。ただ、現状とこれからの流れを考えれば、ECが鈍化することは考えにくく、経済産業省の資料で2020年EC流通額20兆円規模というのはごく自然の流れと言える。となると、実店舗で購入されていない、バーチャルの世界でこれだけの流通額が生まれていることは無視できない。日本国内の小売流通総額は約300兆円となっているが、これが増えるとは考えにくい。となるとECに流れる流通額は、実店舗での販売額が落ちることにつながる。となれば、しっかり顧客管理を行って、実店舗での購入者とECの購入者を一元管理してフォローする必要が出てくる。実店舗だけで購入するのか、ECだけで購入するのか、はたまた両方で購入するのかも今の時点でわかっていない企業が多くある。ポイントでもまったく同様だ。

次に商品情報の一元化だ。商品情報は実店舗とECで求められる情報が違っている。実店舗では商品の基本情報「商品名」や「価格」、「バーコード用の商品ID」、「カテゴリ、棚番」が主になっている。ECでは商品の基本情報にプラスして画像や商品説明が大量に必要になってくる。これは実店舗では手にとって感触や臭いなど五感を使って商品を吟味できるがECではそれがディスプレイの中でしか判断するしか無い。このため多くの商品情報を一つ一つ丁寧に入力する必要がある。価格も販売価格やタイムセール価格など価格設定を複雑に組んで販売することが多く、瞬時に価格を変えることも可能である。商品情報の入力項目は、アマゾン出店では1商品180項目以上になることもある。商品情報の一元化を行う場合、お客様に求められる情報が実店舗とECで違ってくることから一元化を行う場合に、誰がどこでいつどうやって入力し、管理するのかが課題になってくる。

そして、3つ目の課題が在庫の一元管理になる。実店舗がある小売業でECを始めた場合に、ほとんどの企業で問題になるのが、在庫の取り合いだ。ECで注文が入ると実店舗から在庫を移動しなければならない。ここでPOSレジに店間移動の機能があればまだ楽なのだが、店間移動の機能がないと伝票で処理をしなければならない。当然ながら手書きで行い、基幹システムへの入力という事務処理も行う。このような面倒な手続きをすることを嫌がるため、ECの注文が入っても実店舗から在庫を出さないことは非常に多い。このためEC側の担当者はEC用の在庫を確保し始めることも多くなる。

また、在庫を手放すことで実店舗の在庫が無くなって、機会損失を起こす場合がある。結果、実店舗の売上を下げてしまい担当者や実店舗の成績に影響してしまう。実店舗とEC側で在庫を取り合い、お互いに非協力的になることはしばしばである。

これは今まで取り組んできた目標管理が影響している。担当者売上や店舗売上の目標を立ててKPI管理してきた経営側が即座に考えなくてはならない課題である。ECの売上をどこに付けようが経営側からすればどこで売れても会社の売上・利益になるわけだから目標管理を変えてしまえばいい課題だ。これは今までいろんな企業を見てきて明らかにトップダウンで決定するのが一番良い。目標管理に縛られて動きがとれないようでは、今後のスピード感には付いていけない。

在庫管理でうまく行っている例は、ECで売れた場合に実店舗から在庫を出せば、売上協力ポイントとして上げている企業がある。このようなシンプルな目標管理が関係者にはわかりやすい。担当者評価、部門評価から全社評価になった場合、個々の目標がぼやけてしまうため、オムニチャネルだからと言って、スタッフ全員を全社評価にすることは避けたい。売上協力ポイントやEC協力ポイントなどをうまく組み合わせて目標管理を行って欲しい。

このような目標管理が出来ないこともよく有る。このような時にはEC用の在庫を別で持つことが出てくる。この場合、EC側の責任が高くなるが、逆に実店舗以上の売上を稼ぐこともある。在庫を倉庫において、倉庫で商品撮影、画像処理、ページ作成、在庫管理、ピッキング、発送まで行っている。もちろん、返品処理も倉庫で行う。在庫とEC販売スタッフが近くにいることが大切で、離れてしまうと売上は下がってしまうことが多い。

ECで売上が伸びてきた場合に、在庫をアウトソーシング先の倉庫で管理していくか、自社倉庫で管理していくかは大きな意思決定になっていく。自社の成長と今後の戦略、進め方で変わってくるため、慎重にかつ素早く判断したいところだ。実店舗内の倉庫や事務所でECの在庫管理をして、大きく伸びた事例を今までの経験上見たことはない。

実店舗の在庫管理はどこまで深く考えるかによってもだいぶ変わってくる。例えば実店舗でお客様が買い物かごに入れた商品の在庫はどうするのかとか展示品で汚れた商品の在庫をどう扱うかなど細かく見れば切りがなくなってくる。オムニチャネルを進める場合にあまり細かいところまで考えるより、シンプルに実店舗ではPOSレジを通ったら購入というステータス、実店舗内にある場合には店舗在庫とすれば良い。難しく考えすぎて止まってしまうほうが機会損失になってしまう。

一方、すでに顧客、商品、在庫の各一元化ができている企業もある。この場合、次のステップへ進めることが出来る。

オムニチャネル戦略で4つのどこを深く攻めていくのか?

オムニチャネルを進める上で、基礎的な情報管理ができてくると、次の施策をどうするべきか悩むことが多い。各社の動きをまとめると以下の4つに絞れる。

・ジオロケーション(位置情報サービス)

・パーソナライズ&UX最適化

・デジタルメディア

・データ&分析

ひとつめは、ジオロケーションだ。ジオロケーションはユーザーの位置情報を扱う技術のことである。この技術でユーザーがいる場所、立っている位置などから各種の情報を通知するサービスが可能になってくる。このため、ビーコンを設置してアプリからプッシュ通知でクーポンを配布するようなサービスが米国でもよく見られる。位置情報は、ビーコンやGPS、ネットワークIPアドレス、携帯会社のアンテナなどを使用してお客様の位置情報をつかんでいる。

現在の課題としては、屋外にいる場合にはGPSや携帯会社のアンテナを使用して位置情報を取得しようとするため、誤差が大きい。このため米国ebayではスマートタウンで街全体にビーコンなどを設置して街にいるユーザーの動きを追って情報提供することを考えている。これを世界中でサービス提供したいと言うのが、彼らの狙いだ。日本ではセブンアイホールディングスがアリオ亀有で亀有駅から実店舗までをこの位置情報サービスを展開している。

屋内ではビーコン使用が現在のところ主流になっている。このビーコンはBluetooth(以下ブルートゥース)という通信技術を使っているため、ブルートゥースを搭載していないスマホでは使えない。アップル社のiPhoneはこれに対応しているが、Googleのアンドロイド端末ではまだまだ対応している機種が少ない。また、ブルートゥースを搭載していても、アプリを起動しなければ意味が無い。アプリを使っていれば屋内でも位置情報サービスを提供できる。このため、日本でなかなか位置情報サービスを使ってクーポン配布や売れ筋ランキング情報をプッシュ通知でお知らせみたいなことをしたくても、出来ないことが多い。まだまだこの辺りはインフラが整備されていない。

現在、技術的にできておもしろい取り組みとしては、チラシ広告1枚ずつに別々のIDやQRコードを印刷して地域を250Mごとにエリアを分けてチラシ広告を配布、どこのお客様が来店したかを調べることを行っている会社がある。これはポスティングでもっと細かくエリアを分けて実施することも考えられる。オムニチャネルだからと言って、すべてデジタルで行う必要はない。

2つ目がパーソナライズとUX最適化。パーソナライズとは、お客様やユーザー全員に同じサービスやコンテンツを提供するのではなく、一人一人の属性や購買/行動履歴に基づいて最適化されたものを提供する手法を指す。

UX最適化は、ユーザーエクスペリエンス最適化の略で、お客様の体験の最適化を指す。例えば、ディズニーランドのユーザーエクスペリエンスは、ディズニーに入った瞬間、建物やスタッフとの体験、食べた時の体験、食後の体験などをすべてお客様中心で考えている。このすべてがお客様にとってディズニー体験となるように最適化している。

スーパーで言えば、お店に入る前、入った後の野菜やお魚、お肉の売り場やそこにいるスタッフ、試食や試飲のマネキンさん、レジの対応、レジが終わった後、お店から出た後などすべてがお客様の体験になる。これらを最適化していくことになってくる。

パーソナライズとUX最適化は、日本ではCRMに置き換えられることが多い。CRMとはカスタマーリレーションシップマネジメントのことで、お客様との関係性を管理することだ。店舗ごとの売上ではなく、顧客✕客単価を管理し、お客様のリピート率を管理していく。LTV(ライフタイムバリュー)の考え方が入ることも多い。LTVは顧客生涯価値のことで、企業が継続的に発展していくために、お客様の満足度を継続的に高める必要がある。このLTVの高い顧客をいかに確保していくことが大切になっている。顧客情報と商品情報を組み合わせて管理することで、次の施策を考えやすくなってくる。

今のところお客様に合わせたメール配信やお手紙などを送ることが多く、クーポン配布やポイント倍付キャンペーンなども行うことがある。新規のユーザー獲得も大事だが、お客様獲得費用が年々高くなる中、一度獲得したお客様に継続的にお買い物をしていただく、満足度を高めてお客様の離脱を防いでいくことがこれからはますます必要になっている。

デジタルメディアは、インターネットのウェブ広告やソーシャルメディア、動画サイトなどのこと指しているが、最近ではTVCMやインフォマーシャルなどと合わせて考えることも多くなってきている。このデジタルメディアの爆発力は、前述のソーシャルメディアの高速コミュニケーションでもお伝えしたが、マスコミの媒体力を遥かに凌ぐ威力を持っている。また、既存の媒体との組み合わせもしっかり考えておきたい。オムニチャネル時代にこのデジタルメディアの使い方は重要なポイントになってくる。企業のウェブサイト、スタッフが書くブログ、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルなどをしっかり管理して、適切な情報をタイミングよく配信する必要がある。段々と出来てきた業界のために、各メディアで担当が違うことが多く、横断的なマーケティングが出来ていないことが多い。これからは横断的にデジタルメディアのマーケティングを考えて実行することが必要になる。この実行には素早い意思決定が重要になってくる。管理体制と社員教育を含めて検討したい項目である。

最後にデータと分析を紹介する。実店舗ではPOSレジによる販売時点情報管理ができる。ECではユーザーのアクセス状況から買い物終了後の動きまでデータを取ることが出来る。ただ、実店舗では来店したお客様の動きを追っていることは少ない。現在、いろんな企業が実験を始めているが、実店舗のユーザーデータをすべて取得すると、非常に大きなデータになってしまいがちだ。実店舗とECを両方とも同じレベルでデータ収集して分析する解決方法はまだ少ないが、今後はサービスが増えてくると思われる。

オムニチャネル時代は、いかにデータを収集し、それを分析して、次のマーケティングにつなげることが出来るかが勝負である。まずはデータを収集することを始め無くてはならない。これは一度設置すればいろんなデータを集めることが出来る。そしてどのようにデータを分析するかだ。この分析でその後を大きく左右してしまう。分析と次のマーケティングは一緒に出来る人材はまだまだ少ない。いずれにしても、大量のデータをどのように使いこなすかが大切になってくる。

オムニチャネルを進めていくといろんな課題が浮き彫りになってくる。在庫情報、競合分析、商品レビューの閲覧をどのように行うか?実店舗やECに関わらず他店舗からの配送の実施といった流通システムの改善、さらに配送情報、在庫情報、仕入れ発注機能や販売チャネルと倉庫の最適化などが必要になる。そして大事なスタッフへの教育が今までの実店舗でのノウハウだけでなく、オムニチャネル時代にあったカリキュラムを作成して行う必要がある。それはソーシャルメディアのモラルやインターネットのセキュリティも含めてである。

上述した3つの進化によりオムニチャネルは時代が求める大きな曲がり角に来ている。クリック・アンド・モルタルと言われていた時代が懐かしいが、あの時代とは大きく変わった背景を考えると小売流通業はオムニチャネルをやらなければならない状況になってしまった。クレジットカードが出現した時に、クレジットカードを行う必要があるかどうかではなく、やらなければならない状況とよく似ている。この状況からオムニチャネルを必要悪と考え最小限で進めていくか、積極的に進めていくかは企業の考え方による。が、オムニチャネルは企業基盤の刷新が求められていると言っても過言ではない。しかもスピードを要求されている。

3つのキーワード

オムニチャネル・リテイリングを考える時、私は3つのキーワードを挙げることにしている。

・3つのF FUN FAST FRESH

・魂のご馳走

・WHY?なぜやるのか?

3つのFは、FUN FAST FRESHだ。FUNは楽しく

FASTは素早く、早く

FRESHは、新鮮だ

もちろん、お客様に対してを第一に、社内にもこれをタイミングよく、実施することを考える。

魂のご馳走は、お客様の声だ。特にうれしいお客様の声を集める。実店舗にいるとお客様の声は、肌で感じやすいがオムニチャネルになってくるとそうは行かない。仕組みとしてお客様の声を集める必要がある。そして良い声だけを社内外のスタッフで共有する。悪い声やクレームは関係者だけで事務的に処理をする。ここが大事だ。

そして最後がWHY?なぜやるかだ。ここがしっかりしていないと、方向性がガタついてしまう。お客様一人ひとりを考え、お客様の体験を最適化していく。お客様とのすべての接触ポイント(タッチポイント)とお客様が求めている商品やサービスを提供していくこと、これはまさに「おもてなし」である。これからは独自の新しいおもてなしの文化を創造することが必要なのだ。お客様中心に考え、今現状、起きている背景を考えながら、なぜオムニチャネルを自社で実践していくのか?そこが結果的にこれからの企業の差別化になっていく。情報の統合、融合から次のイノベーションへつながっていく。ロイヤリティの高いお客様をがっちり掴んでいくことが重要なのだ。

つまり、オムニチャネル・リテイリングの進む道は「お客様への新しいおもてなし文化の創造であり、企業最適化の促進」と考えられるのだ。

川連一豊

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