オウンドメディアとは簡単にいえば、「自社のメディア」だ。
自分のテレビ番組、自分の新聞、自分の雑誌を持つようなものだ。この自分のメディアをWeb上で作ること、それを「オウンドメディア」とここでは定義したい。
オウンドメディアは、今流行のコンテンツマーケティングの一部と言ってもいい。また、テレビや新聞、雑誌と違うのは、マスコミ(大衆向け)ではなく、マイクロメディアと言ってその情報を必要としている人々だけに向けたメディアと言える。
オウンドメディアについては、たくさんの本やWeb上にも書かれているので、ここでは実際にオウンドメディアを運用した場合に出る問題点を上げて、それをどのように解決していくかをご紹介したい。
なぜ、オウンドメディアがこれだけ注目を浴びて、もてはやされているか?
それはズバリ効果があるからだ。
しかし、効果をしっかり上げている企業はかなり少ない。
何となく他の企業もやっているからとか、検索にかからないから始めたと言った理由で始めたオウンドメディアは続かない。反応がないからモチベーションが上がらないのだ。
オウンドメディアを成功させている企業の共通点は、「ユーザーにとって必須の情報」もしくは「欲しかった情報」があると言うところだ。だからユーザーは反応する。
Eコマース業界では、2000年にすでにこのような話が出ていて如何に情報ページを充実させるかという点を徹底的に磨いてきたのだ。だから2012年頃からオウンドメディアと言うキーワードが出てきた時、違和感を感じたEC企業やECショップは多い。そんなことは昔からやっているからだ。
情報ページのコンテンツをもっと充実させ、メディアの考えを取り入れ、ユーザーエクスペリエンスを考えて編集されたサイトをオウンドメディアと呼んでいい。
多くの情報 → ユーザーエクスペリエンス編集 → オウンドメディア
オウンドメディアを運用する場合に、コンセプトはどうするか、ターゲットとするお客様をどうするかの話が多い。もちろん、それはとても大事だ。だが、もっと大事なことがある。それは、自分のメディアを好きか、書いている内容が好きか、大好きなことを編集しているかが、とっても重要だ。
なぜ、好きなメディアでなければならないかと言えば、長く続くからだ。嫌々やらされたら続かない。
テレビ番組や雑誌でも、人気のあるコンテンツは長く続く。出演者や編集者はとても楽しそうだ。見ているこちらも楽しくなってくる。だが、テレビ番組はDVDやハードディスクに録画をして残す。雑誌は本棚か記事を切り取って残したりする。しかし、中身の検索はなかなかできない。だから、後から見ようと思っても時間がかかるので見なくなってしまう。
ところが、Webにアップするオウンドメディアはサーバやネットがある限り、ほぼ永遠に資産として残る。Webのオウンドメディアは、10年でも50年でも資産としてWeb上に残るのだ。見たい時に検索すればすぐに見ることが出来る。そして検索やソーシャル、レコメンドされて、ユーザーに簡単に届く。
想像してみて欲しい。10年後に自分が作ったメディアを検索しているユーザーがいるのだ。実際に、Apple社のスティーブ・ジョブズの30年前の動画を見るユーザーや明治維新や三国志の歴史を検索して、ソーシャルで拡散するユーザーがいるのだ。
そういう想いでオウンドメディアを考えた時、そのメディアを「自分が大好きかどうか」はとても重要なファクターになる。
次に決めるのはネーミングとドメインだ。ドメインとはyoutube.comとかyahoo.co.jpというインターネット上の住所=URLだ。ドメインがいかに重要かは他に譲るとして、ドメインがめちゃ長いとか、読みにくいドメインだと後からすごく大変になる。ユーザーになりそうな方にドメイン候補を一度見てもらうといい。いいかどうかの判断はユーザーがパッとわかるかどうかだ。
自分のメディアだから、ネーミングはとても大事に決めるのだが、そのネーミングと同様にドメインも真剣に考えて欲しい。ネーミングとドメインはコンセプトとの一貫性が必要だ。ぜひ一緒に考えて欲しい。
オウンドメディアのネーミングを考える時に、重要なのが「文字変換できる」と「実際に検索してみる」この2つだ。
カンピュータでネーミングを決めるのも良いとは思うが、やはりユーザーがPCやスマホで文字を打った時に、文字変換できるかどうかは大きい。Webなら必須だ。
例えば、私の名前「川連一豊」は、まず間違いなく一発で変換できない。メールを送ってくる方は、「川連れさん」が多いのだが、たぶん「川」と打って、「つれ」を変換して、「れ」をそのまま残ってしまったパターンだと思う。このようなメッセージをもらうと苦労させてしまっている・・・といつも思ってしまう。
それと、実際に検索してみて欲しい。ネーミングも決まって、販促物も作り始めて、ネットで検索してみたら、同じようなネーミングやキーワードで埋まり尽くしていたり、口ではとても言えないまったく別の意味になっていたりするのだ。スラングだったこともある。
なぜプロジェクトメンバーが一人も検索してなかったのか疑問なのだが、実際にこういうことは多い。もちろん、商標登録も調べておくのは大切だ。
ドメインはお名前ドットコム(onamae.com)で簡単に調べられる。できる限り短く、わかりやすいドメインがいい。ブラウザで直接URLを叩くことを考えるのではなく、ネーミング同様、人がなんと言って、そのメディアを口コミするかを想像するのだ。
例えば、「今度作った、センスの感度が高いトレンドファッション通信を見て欲しいんだけど、URLはね。Sensutorendofashiontsushin.infoなんだ。」と知人から言われたら、頭の中で「?」がいっぱいだ。実はこんなことは日常茶飯事だ。「えっ?」と思わずのけぞってしまうのだが、本人はいたってまじめだったりする。
ドメイン例
三越伊勢丹ファッションヘッドライン
http://www.fashion-headline.com/
長いけどわかる。ネーミングやドメインもバッチリな例だ。
楽しいiPhone appbank
わかりやすい。
パッと見て、わかりにくいのが
http://mb.mercedes-benz.com/ja_JP/ だ。
好きなユーザーはすぐわかる。そう、メルセデス・ベンツのオウンドメディアだ。
ただ、ベンツだから許される。
これから始める、またはうまく行っていないオウンドメディアは、ネーミングとドメインを大切にして欲しい。
*もし、決まってしまったネーミングがあり、それを使う必要がある場合には、そのネーミングを如何にブランド化するかに集中させる。ネーミングがユニークであればそれはチャンスと考えよう。世界でひとつしか無いなら、検索で必ず1番になるからだ。
どんなタイプにするか?
オウンドメディアを検討する場合、メディアとしてどんなタイプにするかを決めておきたい。
現在のオウンドメディアの種類は
1.コーポレートサイト
2.ブログ
3.写真や動画サイト
4.ユーザー参加型メディア
5.ニュースサイト
6.まとめサイト
大きく6つに分けられる。
オウンドメディアと言っても、何かしらユーザーの転換ポイントを決めておきたい。ただ、単にメディアを見せるだけではなく、メールアドレスを登録したり、会員登録することも考えられる。オウンドメディアの成果をどうするかもひとつ大きなポイントになる。
6つのユーザー転換ポイント
1.お問い合わせ
2.ホワイトペーパーダウンロード
3.製品やサービスサイトやページへのリンク
4.会員登録
5.メールマガジン登録
6.アプリダウンロード
オウンドメディアとしては、この6つのユーザー転換ポイントを考えておく。どのようにユーザーが動いて、転換していくかはどんどん複雑化している。ソーシャルメディアや検索、ブログでの紹介、もちろんPCやスマホ、タブレットなどの端末も考えなければならない。
Webサイトと各ページのどこにどのように配置をするかは、事前に検討しただけではダメだ。できれば毎日、ボタンの位置やボタンの色なども変更したい。ABテストも行いたい。いかに自分のメディアを更新して、どんどん良いオウンドメディアにしていくかが勝負だ。
クライアントにもこの辺りしっかり説明しておこう。
*カスタマージャーニー
*マルチスクリーンの流れ スマホからPC、タブレットとどこへ続いていくのか?
ページ数について
オウンドメディアのページ数は、はっきり言って、たくさんあればある程よい。それはユーザーが情報を探した時に、ロングテールで情報があればユーザーがそのオウンドメディアにたどり着く確率が高まるからだ。
例えば、オウンドメディアで有名なサイトをGoogleインデックス数で見てみると
三越伊勢丹ファッションヘッドライン
http://www.fashion-headline.com/
インデックス数 103,000
北欧雑貨と北欧食器の通販サイト
http://hokuohkurashi.com/
インデックス数 32,600
UNIQLO COMMUNITY | ユニクロコミュニティ
http://www.uniqlo.com/jp/community/
インデックス数 53,500
ユーザー参加型
特別なサイトとしてはこちら
ほぼ日刊イトイ新聞
http://www.1101.com/home.html
インデックス数は1ページしか無い。
こちらは、真似しないほうが無難だ。
オウンドメディアを作ろうとする企業からは、どのくらい続けると効果がありますか?と言う質問があるが、「半年は続けて欲しい。」と伝えることにしている。ただ、1日1ページを作成して、半年だと180ページ。1年で365ページだ。とてもではないが、正直言ってこれでは勝てない。
ベンチマークとするサイトや競合サイトと比べて、少なくてもページ数で勝てなければ意味が無い。もちろん、コンテンツがあることが大前提だ。オウンドメディアで勝つにはページ数はひとつ大きなKPIとなる。極端な話、ウィキペディアに勝てるか?楽天やアマゾンに勝てるか?と同じなのだ。メディアとしたら、フジテレビや日経新聞に勝てるのか?になる。
また、一昔流行った自動収集でページを作成するサイトがあったが、もうこれは今や通用しない。やるだけ無駄なので検討もしないほうがいい。
どう収益を上げるのか?
さて、最後にオウンドメディアの収益をどうするかだ。
オウンドメディアを広告で運用する場合、よく検討するのがアドセンスの収益として
1PV=0.1~0.5円として考える。
計算しやすいように、1PV =0.5円とすると、
1万ページビューで5,000円
10万ページビューで、5万円だ。
この単価はコンテンツによっても収益が変わる。
ブログでメシが食えるか? Publickeyの2014年の記事を見ると
http://www.publickey1.jp/
http://www.publickey1.jp/blog/14/_publickey2014.html
バナー広告などが400万5988円、タイアップが441万6300円、AdSenseやAmazonアソシエイトなどが48万1205円、記事ライセンスなどが34万円と約900万円になっていることが分かる。こちらのサイトは、毎月40万ページビューとなっている。
企業や業種にもよるが、やはりオウンドメディアの運営費を別途で頂き、ホワイトペーパーダウンロード1回に付き課金するとか、お問い合わせ1件で課金するなどの契約を結ぶのが良い。アドセンスだけで収益を上げるのは厳しい。
オウンドメディアの収益を考えるのであれば、販売促進の一部として運営費を捻出し、アドセンスのような1PV いくらの広告費だけではなく、アフィリエイトやタイアップなどと合わせて、収益を保管するような契約を行っていきたい。
オウンドメディアで勝つならば、当然速いサーバやネットワークが必要であるし、CMSもWordpressがオススメの1つだが、セキュリティはしっかりしておきたい。サーバはコンテンツ量に応じて増やせるクラウドが良い。バックアップも重要だ。基礎的なインフラについては日頃から勉強しておくことが大事だ。現在では、そんなに難しいことではなくなった。
オウンドメディアは、すぐに始められる。しかし、生半可な気持ちでは無理だ。クライアントと制作・編集する側、お互いのモチベーションが上がるように、長くおつきあいできる環境を作り、維持していくのがベストだ。
成功するには、Webメディアを長く運用する気持ちを持つことが大事だ。そこがスタートだ。
川連一豊