越境ECで問題になるのは、商品価格だけではない
日本国内でECサイトを運営している企業が海外販売を始めるとき、最初に考えるのは、多言語対応や海外向けの決済、国際配送の方法かもしれません。しかし、実際に海外の消費者へ商品を届けるには、もう一つ重要な問題があります。関税や輸入税、通関手数料など、国境を越えることで発生する費用です。
例えば、日本のECサイトで12,000円の商品を海外の消費者が購入する場面を考えてみましょう。国際送料が2,800円なら、購入者は14,800円で商品が届くと考えるかもしれません。
ところが、配送先の国や商品の種類によっては、輸入時に関税や税金が課されます。さらに、配送会社による通関関連の手数料が発生することもあります。
購入時には14,800円を支払ったのに、商品を受け取る際に追加費用を請求されたとしたら、購入者はどう感じるでしょうか。事前に説明がなければ、販売者への不信感につながる可能性があります。
越境ECでは、商品を海外へ発送できることだけでなく、購入者が最終的にいくら支払うのかを明確にすることが重要です。
こうした課題への対応を支援するサービスの一つが、Zonosです。
Zonosとは?越境ECに必要な費用計算を支援するサービス
Zonosは、国境を越えた商品販売に必要な関税・税金・輸入関連費用の計算や、国際配送、通関に関する業務を支援するサービスです。
中心となる機能の一つが「Landed Cost」です。これは、商品を輸入先へ届けるまでに必要となる費用を計算する仕組みです。
越境ECでは、商品価格と国際送料だけで総額が決まるとは限りません。商品の分類や原産国、配送先の税制、配送方法などによって、さまざまな費用が変わります。ZonosのLanded Costは、これらの情報をもとに関税・税金・輸入手数料などを計算し、販売システムへ結果を返します。
また、Zonosには国際送料の計算を支援する「Rate」、商品のHSコード分類を支援する「Classify」、輸出入規制の確認を支援する「Restrict」などの機能があります。
これらを組み合わせることで、海外販売に伴う複雑な処理をECサイトや業務システムへ組み込みやすくなります。
ただし、Zonosは国際配送そのものを代行する運送会社ではありません。配送サービスとの接続や費用計算を支援する仕組みであり、実際の輸送や通関の手続きについては、利用する配送会社や契約条件なども関係します。
Landed Costとは?関税・税金・送料を含む総費用
Landed Costを理解するには、海外の消費者が商品を受け取るまでに、どのような費用が発生するのかを整理するとわかりやすくなります。
まず商品そのものの代金があります。次に、発送元から配送先までの国際送料が発生します。輸入先によっては関税や付加価値税などの税金が課され、税関での処理や運送会社による立替払いなどに伴う手数料が加わることもあります。
例えば、次のような取引を考えてみましょう。
| 費用項目 | 金額 |
|---|---|
| 商品代金 | 12,000円 |
| 国際送料 | 2,800円 |
| 関税・税金 | 3,200円 |
| 輸入関連手数料 | 500円 |
| 合計 | 18,500円 |
※金額は仕組みを説明するための仮定であり、特定の国・商品に対する実際の税率やZonosの見積もりではありません。
この例では、商品代金と送料だけを見れば14,800円ですが、輸入に伴う費用を含めると18,500円になります。
購入者にとって重要なのは、最終的な費用を購入前に把握できることです。販売者にとっても、こうした情報をあらかじめ示すことで、追加請求に関する問い合わせや受取時のトラブルを減らせる可能性があります。
なお、関税や税金の計算方法は国によって異なり、送料が課税対象に含まれる場合もあります。商品価格に一定の税率を掛ければ済むという単純な仕組みではありません。
DDPとDAPの違い|関税や税金は誰が負担するのか
越境ECで関税や税金を扱う際には、費用の金額だけでなく、誰が支払いと輸入手続きを担当するのかも重要になります。
この違いを理解するうえで役立つのが、国際商業会議所(ICC)が定めるインコタームズ(Incoterms)のDDPとDAPです。
DDPは「Delivered Duty Paid」の略で、原則として販売者が輸入通関の手配や関税・輸入税の支払いを含め、指定された配送先まで商品を届ける責任を負う条件です。
一方、DAPは「Delivered at Place」の略で、販売者が指定された場所までの輸送を手配するものの、輸入通関や関税・輸入税の負担は原則として購入者側にあります。
両者の違いは、海外通販の購入体験にも関係します。
DAPで販売する場合、購入者は商品到着時に関税や税金の支払いを求められることがあります。これらの費用を購入前に十分説明していないと、予想外の追加請求として受け止められるかもしれません。
DDPでは、販売者が輸入費用を含む取引条件を整えられるため、購入者にとっては最終的な支払額を把握しやすくなります。ECサイトで関税や税金をあらかじめ計算し、購入時に回収する仕組みは、このような販売方法と相性がよいといえます。
ただし、DDPで販売するには、輸入先での通関や納税に関する条件を満たす必要があります。国によっては海外の販売者が輸入者として手続きを行うことに制約があるため、常にDDPを利用できるわけではありません。
また、チェックアウトで関税を徴収することと、法的な輸入責任を負うことは同じではありません。実際の取引条件、契約、輸入者の指定などを確認する必要があります。
Zonosはどのように関税・税金を計算するのか
ZonosのLanded Costでは、配送先や商品情報、送料などをもとに、輸入時に発生する費用を計算します。
その際に重要な情報の一つが、HSコードです。
HSコードとは、国際貿易で商品を分類するための番号です。衣類、食品、機械、電子機器などの商品は、それぞれの性質に応じた分類が用いられます。この分類によって、適用される関税率や輸入規制が変わることがあります。
例えば、同じような衣類でも、素材や商品の種類によって分類が異なる場合があります。そのため、商品名だけでなく、素材、用途、原産国などの情報が重要になります。
Zonosの「Classify」は、こうした商品情報をもとにHSコードの分類を支援する機能です。AIを利用した分類に対応しており、結果の確信度を示す仕組みもあります。
ただし、AIによる分類結果が常に正しいとは限りません。説明が曖昧な商品や分類の難しい商品については、追加情報の入力や人による確認が必要になる場合があります。
Zonosの仕組みを導入するときも、商品の情報が適切に管理されていることが重要です。商品データが不十分なままでは、どれほど優れた計算システムでも正確な結果を得ることが難しくなります。
国際送料も配送先や配送方法によって変わる
越境ECでは、関税や税金と同じように、国際送料の計算も複雑になります。
配送先の国、商品の重量や大きさ、配送会社、配送サービスの種類などによって送料が変わるためです。
例えば、同じ商品でも、配送先がアジアなのか欧州なのかによって送料は異なります。また、重量が軽くても梱包サイズが大きければ、容積重量によって送料が計算されることがあります。
Zonosの「Rate」は、配送会社とのAPI連携や料金表などを利用して、配送条件に応じた送料を算出する機能です。
Landed Costと連携させれば、送料を計算したうえで、配送先に応じた関税や税金の計算へつなげられます。
ただし、利用できる配送会社やサービス、料金は、契約や設定によって異なります。Zonosを導入すれば、世界中のすべての配送方法が自動的に利用できるわけではありません。
販売する国・地域と利用する配送会社を整理し、どの配送条件を顧客に提示するかを設計する必要があります。
輸出入規制の確認にも対応できる
海外向けに商品を販売する場合、もう一つ注意したいのが輸出入規制です。
国内では通常の商品として販売できるものでも、海外では輸入が制限されていたり、特別な許可が必要だったりすることがあります。
例えば、食品、化粧品、医薬品、電子機器などでは、商品や配送先によって確認すべき規制が異なります。
Zonosの「Restrict」は、商品のHSコードや説明、発送元・配送先の国などをもとに、輸出入に関する制限の確認を支援する機能です。
こうした確認を販売フローへ組み込めば、発送できない商品を誤って販売してしまうリスクを減らせる可能性があります。
もっとも、規制の判定結果が、輸出入に関するすべての法的確認を代替するわけではありません。必要な許認可や書類の確認、法令への適合については、取り扱う商品と対象国に応じた対応が必要です。
ECサイトへ組み込むと購入フローはどう変わるのか
Zonosの関税・送料計算をECサイトと連携させると、海外向けのチェックアウトをよりわかりやすく設計できます。
例えば、購入者が商品をカートに入れ、配送先の国や住所を入力した段階で、ECシステムが商品情報と配送情報をZonosへ送信する仕組みを考えてみましょう。
Zonosから送料や関税・税金などの計算結果を受け取れば、ECサイトはそれらを商品代金と合わせて購入者へ表示できます。
購入者は、商品代金だけでなく、海外配送に必要な費用を確認してから注文を確定できます。
このような仕組みには、既存のECプラットフォーム向けの連携機能を利用する方法と、APIを利用して独自のチェックアウトへ組み込む方法があります。
後者の場合、購入画面の設計だけでなく、計算結果の保存、注文情報との連携、決済時の金額との整合性、注文内容が変更された場合の再計算なども考える必要があります。
また、注文時に費用を計算することと、実際に出荷して通関することは別の処理です。出荷情報との対応付けや、費用の保証・精算などについても、利用するZonos製品や配送サービスの仕様に合わせた設計が求められます。
Zonosを導入すれば、関税の追加請求はなくなるのか
Zonosには、一定の条件のもとで計算した関税・税金などの金額を保証する仕組みがあります。これは、実際の通関費用と計算結果に差が生じた場合の負担を、契約条件に従って扱うものです。
ただし、Zonosを利用したすべての取引が自動的に保証対象になるわけではありません。
APIには保証付きの計算だけでなく、保証を伴わない計算の利用方法もあります。保証を適用するには、対象となる取引や出荷情報、必要な手続きなどについて条件を確認する必要があります。
また、Zonosの利用には、製品や契約条件に応じた手数料が発生します。海外販売に関係する費用を顧客が負担する設計にするのか、販売者が負担するのかによっても、価格設定や収益性は変わってきます。
導入時には、関税の計算精度だけでなく、保証の条件、利用料金、通関時の取り扱いまで確認することが重要です。
Medusa v2とZonosを組み合わせるメリット
ここまで説明したZonosの機能は、特定のECプラットフォームだけで利用できるものではありません。ZonosはShopifyなどに向けた連携機能を提供しているほか、独自開発のシステムで利用できるAPIも用意しています。
したがって、Zonosを利用するためだけに、既存のEC基盤をMedusa v2へ移行する必要はありません。
一方、販売フローや業務処理を自社独自の仕組みにしたい場合には、Medusa v2とZonosを組み合わせる方法が選択肢になります。
Medusa v2は、商品管理、注文管理、在庫管理などのEC機能を基盤として、独自の業務ロジックや外部システムとの連携を実装できるプラットフォームです。
例えば、国内向けの注文では通常の送料・税計算を行い、海外向けの注文では配送先に応じてZonosによる関税・税金の計算を利用するといった構成が考えられます。さらに、顧客区分に応じた価格設定、複数倉庫からの出荷、外部の在庫管理システムとの連携などを組み合わせることも検討できます。
こうした構成の魅力は、海外販売の機能を追加することだけではありません。事業独自の受注・配送・顧客管理の仕組みと、越境ECに必要な処理を一体的に設計できる点にあります。
ただし、Medusa v2とZonosを組み合わせるには、必要なAPI連携やデータ設計、動作検証などの開発が必要です。標準状態ですべての機能が自動連携するわけではありません。
導入前に確認しておきたいこと
Zonosを導入する際には、まず販売対象となる国・地域と商品を整理することが重要です。
関税や税金は配送先と商品によって変わるため、想定する取引条件が明確でなければ、正確な設計や費用の見積もりが難しくなります。
また、商品データにHSコードや原産国、素材などの情報がどの程度整備されているかも確認する必要があります。既存の商品情報が不十分であれば、Zonosとの連携開発とは別に、商品マスタの整備が必要になるかもしれません。
次に、国際送料をどのように計算するかを検討します。利用する配送会社や配送サービス、倉庫の所在地、梱包方法などによって必要な設定が変わります。
さらに、関税・税金を誰が負担するのか、購入時に回収するのか、追加費用が発生した場合にどのように対応するのかも決めなければなりません。
これらはZonosの機能だけで決まるものではなく、販売者の事業方針や物流体制に関わる問題です。
越境ECでは、購入前の透明性が重要になる
越境ECの難しさは、国際配送の手配だけにあるわけではありません。商品価格とは別に発生する関税・税金・輸入手数料を把握し、その費用を誰が負担するのかを明確にする必要があります。
Zonosは、こうした海外販売特有の課題を、計算APIや商品分類、配送関連の機能などによって支援するサービスです。
導入によって、購入者が最終的な支払額を把握しやすいチェックアウトを設計でき、販売者にとっても複雑な計算や確認業務を効率化できる可能性があります。
ただし、正確な費用計算や円滑な通関を実現するためには、商品データの整備、配送条件の設定、輸入先の規制への対応などが欠かせません。Zonosはそれらを支援する仕組みであり、越境ECの運用全体を自動的に解決するものではありません。
フォースター株式会社では、Medusa v2による柔軟なEC基盤の構築と、ZonosのAPIを活用した越境EC機能の導入を組み合わせたサービスを提案しています。
海外販売の拡大を検討している企業にとって重要なのは、個々の機能を追加することだけでなく、自社の販売・物流・顧客管理の仕組みと無理なく連携できるEC基盤を整えることです。
関税や送料の計算方法を見直したい、海外販売に対応した独自のチェックアウトを構築したいといった場合には、まず現在の業務とシステム構成を整理し、必要な機能と実現方法を検討することから始めるのがよいでしょう。
自社EC基盤の構築を、具体的に検討してみませんか?
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Shopifyの継続利用と自社EC基盤の構築では、必要な投資も、実現できることも異なります。
フォースターでは、Medusa v2とZonosを活用し、柔軟なEC基盤の構築から国内決済・物流連携、越境EC、AI活用までを支援します。
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参考資料
本記事の執筆にあたり、以下の公式資料を参考にしました。各サービスの機能や料金、対象国・地域、通関に関する制度は変更される場合があります。導入や実際の取引にあたっては、最新の公式情報をご確認ください。
- Zonos公式|製品・APIドキュメント
Zonosの各サービスとAPIの概要。 - Zonos公式|Landed Cost
関税・税金・輸入手数料の計算機能。 - Zonos公式|Classify
HSコードの分類と商品情報の取り扱い。 - Zonos公式|Restrict
商品の輸出入規制を確認する仕組み。 - Zonos公式|Landed Costのよくある質問
総費用の考え方や利用条件。 - 国際商業会議所(ICC)|DAPとDDPの違い
国際取引における輸入通関、関税負担、販売者と購入者の責任の違い。